常田大希はどこへ行くのか
King Gnuの音楽に初めて触れたのは「Flash!!!」だった。圧倒的なオーラ、こいつらなんか違うなと思った。MVも明らかに質感が違った。様々な要素をミクスチャーしながらも、鳴り続けるギターは僕の心を鷲掴みした。
「sympa」を手に入れると、隅から隅までトータルコーディネートされているCDに衝撃を受けた。総合芸術の域まで達していると思った。
2019年はKing Gnuに完全に傾倒した。ファンクバラード白日、ギターが唸る飛行艇、ノスタルジックな香りもする傘、などの楽曲を聴きまくった。井口のラジオ、メンバーのインタビューなどパーソナルな部分に触れる機会もあった。ライブこそ行けなかったもののKing Gnuにどっぷりと浸かった。
そして怒涛の年末テレビラッシュを越え、2020年の幕開けを告げたニューアルバム「CEREMONY」が発売された。
細部まで凝ったサウンドデザイン、新たな時代の到来を告げるファンファーレかのように鳴り響くインストゥルメンタル、そしてより進化したポップセンス。何回も繰り返し聞き、受験期の支えとなった。特にセンター前日の「Mステ」で披露された生演奏「Teenage Forever」を聴いたときは、この先の試験をすべて軽々と乗り越えることができる気がした。(センター惨敗)
だが、お茶の間まで広がるKing Gnuの姿に少し違和感を覚えたのも事実である。Vo.井口が人前に出る際に危なっかしさを感じることもあった。また、ラジオ最終回の大号泣にも不安定さを覚えた。
インタビューでも、「作品には真摯に向き合い100%を注いだが、急かされて作った感覚もある」とKing Gnuの舵取りを担う常田が答えていた。
おそらく、急速に広がる「King Gnu」という存在を彼らは背負い切れない、群れを制御しきれていないという感覚を持っているのではないか。
ここからが本題だ。
King Gnuの活動と並行して、井口を除くメンバーが参加しているのが「millennium parade」である。
King Gnuが「お茶の間に届ける」を目標としているならmillennium parade(ミレパ)は「常田大希の頭の中を再現する」を掲げているように思える。
そんなミレパの新曲が良すぎるのだ。「攻殻機動隊」の主題歌として制作された「Fly with me」である。
あえてフルを聴くのはMV公開までお預けし、プレミアム公開とともに視聴した。
King Gnuメンバーによる人力トラック、それに乗っかるラップは僕の好みどんぴしゃだ。映像は見る度に異世界へトリップした気持ちになるし、音と嵌る箇所がめちゃくちゃかっこいい。Gorillazっぽさも感じてひたすらにかっこいい。
だが、僕がもっともいいなぁぁぁと感じたのは歌詞だ。
I guess we just plowing fields now
(俺たち耕してるだけ)
Damn it's monopoly Ridiculous
(クソつまんねぇ、馬鹿げてる)
常田大希、まったく満足してない。歌詞が100%彼の思っている事ではないだろう。だが、ここまで売れてもまだ世界を睨み続けているのは確かだ。
Its time to get down with me
(俺と逃げ出そうぜ)
And maybe you will Fly with me
(そしたらハイになれるぜ)
後半の「Fly」はMVでは上記のように訳されているが「跳ぶ、飛ぶ」という意味も込めてるのではないか。こんなクソみたいな世界の中で俺の音楽聞いてハイになれよ、もっと新しい世界へ行こうぜと投げかける。
Well the problem is that we still in the game
(まぁ、問題は俺たちはまだ掌の上で踊らされているってことで)
There's nobody who can fly with no fuels
(燃料なしじゃ誰も飛べねぇんだろ?)
I guess we should have all behind
(全部ひっくり返さないとな)
and just ride on this battle ship
(そんでこのバトルシップに乗り込む時がきたようだぜ)
やっぱりこの曲で宣戦布告してる。本気で日本の音楽をひっくり返す意気込みをひしひしと感じる。
and let them know we party with our precious army
(奴らに教えようぜ、これ以上ない仲間と一緒だと)
I guess we should leave all behind and just ride on this battleship
(すべてを置いてこのバトルシップに乗り込むときじゃねぇのか?)
MVで巨悪に向かう映像とともに放たれるのがこの最後のメッセージ。停滞しきった日本の音楽シーンを、常田を中心とした若いクリエイターたちが変えていくという意思を感じるのだ。
常田大希は本気で音楽界を変えようとしているし、この「Fly with me」はその決意表明とも言える曲であるのは間違えない。
死ぬまでついていきたいアーティストである。なぁそうだろ、兄弟.
追記:https://news.j-wave.fm/news/2020/04/post-5821.html
五年前からあった曲で、ミレパのテーマソングとしての位置づけらしい。バックグラウンドを知らなくても、曲とMVだけで伝わるとは。恐るべし。