東京の端より愛をこめて

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WITH LOVE FROM THE EDGE OF TOKYO

常田大希はどこへ行くのか

King Gnuの音楽に初めて触れたのは「Flash!!!」だった。圧倒的なオーラ、こいつらなんか違うなと思った。MVも明らかに質感が違った。様々な要素をミクスチャーしながらも、鳴り続けるギターは僕の心を鷲掴みした。

 

「sympa」を手に入れると、隅から隅までトータルコーディネートされているCDに衝撃を受けた。総合芸術の域まで達していると思った。

 

Sympa(通常盤)

Sympa(通常盤)

  • アーティスト:King Gnu
  • 発売日: 2019/01/16
  • メディア: CD
 

 

2019年はKing Gnuに完全に傾倒した。ファンクバラード白日、ギターが唸る飛行艇、ノスタルジックな香りもする傘、などの楽曲を聴きまくった。井口のラジオ、メンバーのインタビューなどパーソナルな部分に触れる機会もあった。ライブこそ行けなかったもののKing Gnuにどっぷりと浸かった。

 

そして怒涛の年末テレビラッシュを越え、2020年の幕開けを告げたニューアルバム「CEREMONY」が発売された。

細部まで凝ったサウンドデザイン、新たな時代の到来を告げるファンファーレかのように鳴り響くインストゥルメンタル、そしてより進化したポップセンス。何回も繰り返し聞き、受験期の支えとなった。特にセンター前日の「Mステ」で披露された生演奏「Teenage Forever」を聴いたときは、この先の試験をすべて軽々と乗り越えることができる気がした。(センター惨敗)

 

CEREMONY (通常盤)

CEREMONY (通常盤)

  • アーティスト:King Gnu
  • 発売日: 2020/01/15
  • メディア: CD
 

 

 だが、お茶の間まで広がるKing Gnuの姿に少し違和感を覚えたのも事実である。Vo.井口が人前に出る際に危なっかしさを感じることもあった。また、ラジオ最終回の大号泣にも不安定さを覚えた。

インタビューでも、「作品には真摯に向き合い100%を注いだが、急かされて作った感覚もある」とKing Gnuの舵取りを担う常田が答えていた。

おそらく、急速に広がる「King Gnu」という存在を彼らは背負い切れない、群れを制御しきれていないという感覚を持っているのではないか。

 

MUSICA(ムジカ) 2020年 02 月号 [雑誌]

MUSICA(ムジカ) 2020年 02 月号 [雑誌]

  • 発売日: 2020/01/15
  • メディア: 雑誌
 

 ここからが本題だ。

King Gnuの活動と並行して、井口を除くメンバーが参加しているのが「millennium parade」である。

King Gnuが「お茶の間に届ける」を目標としているならmillennium parade(ミレパ)は「常田大希の頭の中を再現する」を掲げているように思える。

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「頭の中を再現する」というのを再現してるんじゃないかな

 そんなミレパの新曲が良すぎるのだ。「攻殻機動隊」の主題歌として制作された「Fly with me」である。

あえてフルを聴くのはMV公開までお預けし、プレミアム公開とともに視聴した。

 

King Gnuメンバーによる人力トラック、それに乗っかるラップは僕の好みどんぴしゃだ。映像は見る度に異世界へトリップした気持ちになるし、音と嵌る箇所がめちゃくちゃかっこいい。Gorillazっぽさも感じてひたすらにかっこいい。

 

だが、僕がもっともいいなぁぁぁと感じたのは歌詞だ。

I guess we just plowing fields now

(俺たち耕してるだけ)

Damn it's monopoly Ridiculous

(クソつまんねぇ、馬鹿げてる)

常田大希、まったく満足してない。歌詞が100%彼の思っている事ではないだろう。だが、ここまで売れてもまだ世界を睨み続けているのは確かだ。

 

 Its time to get down with me

(俺と逃げ出そうぜ)

And maybe you will Fly with me

(そしたらハイになれるぜ)

後半の「Fly」はMVでは上記のように訳されているが「跳ぶ、飛ぶ」という意味も込めてるのではないか。こんなクソみたいな世界の中で俺の音楽聞いてハイになれよ、もっと新しい世界へ行こうぜと投げかける。

 

Well the problem is that we still in the game

(まぁ、問題は俺たちはまだ掌の上で踊らされているってことで) 

There's nobody who can fly with no fuels

(燃料なしじゃ誰も飛べねぇんだろ?)

I guess we should have all behind

(全部ひっくり返さないとな)

and just ride on this battle ship

(そんでこのバトルシップに乗り込む時がきたようだぜ) 

 やっぱりこの曲で宣戦布告してる。本気で日本の音楽をひっくり返す意気込みをひしひしと感じる。

 

and let them know we party with our precious army

(奴らに教えようぜ、これ以上ない仲間と一緒だと)

I guess we should leave all behind and just ride on this battleship

(すべてを置いてこのバトルシップに乗り込むときじゃねぇのか?)

 MVで巨悪に向かう映像とともに放たれるのがこの最後のメッセージ。停滞しきった日本の音楽シーンを、常田を中心とした若いクリエイターたちが変えていくという意思を感じるのだ。

 

 常田大希は本気で音楽界を変えようとしているし、この「Fly with me」はその決意表明とも言える曲であるのは間違えない。

 

死ぬまでついていきたいアーティストである。なぁそうだろ、兄弟.

 

追記:https://news.j-wave.fm/news/2020/04/post-5821.html

五年前からあった曲で、ミレパのテーマソングとしての位置づけらしい。バックグラウンドを知らなくても、曲とMVだけで伝わるとは。恐るべし。